大判例

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大阪高等裁判所 昭和27年(ネ)1122号 判決

控訴人は、「原判決を取り消す。末尾記載の固定資産税の賦課処分はこれを取り消す。被控訴人は、控訴人に対し、金六千六百六十円及びこれに対する訴状送達の翌日から、完済に至るまで、年五分の金員の支払をせよ。訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、控訴人において、地方税法第三百五十九条が、固定資産税の賦課期日後においては、課税物件たる土地の所有権を失つても、その年分の固定資産税全額の納付義務を免れ得ない趣旨を規定したものとすれば、右法律は、憲法の基本的人権尊重の規定に違反し、無効であると述べたほか、原判決事実摘示と同一であるから、こゝに、これを引用する。

(各証拠省略)

三、理  由

先ず本訴が不適法であるとの、被控訴人の本案前の抗弁について判断するに、昭和二十六年度固定資産税にあつては、その第一期ないし第三期分は、仮算定税額によりこれを徴収し、その第四期分において本算定税額との清算をし仮算定税額が本算定税額に満たない場合は、その不足税額を徴収すべきものであること、地方税法第三百六十四条第八項、第五項の定めるところであり、本件控訴人に対する課税処分も、右により、第一期ないし第三期の徴税は、仮算定税額により、昭和二十六年六月一日附の徴税令書を以てこれを賦課し、その第四期分において、本算定税額に基いて、仮算定税額との差額を清算し、その不足税額を合せた上、同年十二月十日第四期の徴税令書を発して、これを賦課したものであること、成立に争のない乙第四号証の一、二により明らかであり、控訴人の本訴は、右第四期分における徴税の取消を求めるものであるが、該徴税は、前記賦課の態様より見て、昭和二十六年六月一日附の徴税令書に全一年分の仮算定税額の記載がなされていても、第一期ないし第三期の徴税のように、単に納期を分けた場合とは異り、不足税額の徴収を含む新たな賦課処分がなされたものと解するのが相当であり、これに対し不服があるときには、この第四期の徴税令書交付の日を基準とし、異議、訴願又は出訴が許されるものと言うべきであり、地方税法第三百七十条は、第一期分の徴税令書の交付を受けた日を基準として、賦課処分に対する不服申立期間を定めているが、右は単に納期を分けた場合に関する規定であるから、本件のように新たな賦課処分があつたものと見るべき場合には該当しない。

なお、控訴人が本訴において、賦課処分の瑕疵なりとして主張するところは、昭和二十六年六月一日の第一期の徴税令書による課税処分についても、当然存したるべき性質のものであると認められるが、第一期における課税処分と第四期における課税処分とは、両者相俟ち、当該年度の固定資産税の賦課処分を構成し、単一な効果の発生を目的とする行為であり、かような場合、一般に後の処分は、先の処分の違法性を承継し、先の処分に対する不服申立期間後も、後の処分に対する不服申立において、右の違法を主張し得るものと解するのが本則であるから、地方税法第三百七十条が、本件のように両個の課税処分の存する場合において、第一期における課税処分に対する不服申立期間の徒過により、第四期における課税処分に対する不服申立を認めない律意であるとは、とうてい考えられない(この点につき、控訴人は本件のように被課税者を誤つた課税処分は当然無効であり、無効原因を理由として取消訴訟をする場合には、出訴期間の制限に服しないと主張するが、右主張は容認できない。)

ところで、控訴人が、前記第四期分における課税処分に対し、徴税令書交付の即日たる昭和二十六年十二月十三日、直ちに異議の申立をしこれに対し、現在に至るも何等決定のなされていないことは、当事者間に争のないところであるから、控訴人の本訴は、昭和二十七年一月十四日に提起せられたものであること、本件記録に照して明らかなことであるが、訴願前置の点から見ても、出訴期間の点から見ても適法であると言うべく、被控訴人のこの点に関する主張は採用できない。

次に本案に関する控訴人の請求の当否について按ずるに、控訴人が、もとその主張の宅地の所有者であつたこと、控訴人が昭和二十六年二月五日右宅地を訴外大和ゴム株式会社に譲渡し同月十日これが所有権移転登記手続を了したこと、ならびに被控訴人が、控訴人に対し、右土地に対する昭和二十六年第四期の固定資産税として、同年十二月十日附を以て控訴人主張のような賦課処分をしたことは、いずれも当事者間に争のないところである。

而して、控訴人は、固定資産税は、地方税法第三百四十三条に従い、固定資産の所有者にのみ課すべきものであり、同法第三百五十九条が一月一日を賦課期日と規定したのは、単に一般の常例に従つての原則的規定に過ぎないから、昭和二十六年の右土地に対する固定資産税は、同年四月以後を納期とする関係上、同年二月において、既にその所有権を失つた控訴人に対し、課せらるべき筋合ではないと主張するのであるが、右第三百五十九条の規定は、固定資産税を以て年税とし、当該年度の初日の属する年の一月一日を賦課期日に定め、同期日において、同法第三百四十三条第二項に規定するように土地台帳若くは土地補充課税台帳に所有者として登載せられている者を、その納税義務者と確定し、爾後右の所有者に変動があつても、当該年度の納税義務者に変更を生ぜしめない趣旨であると解するのが相当であり、かく解するにおいては、所有者でないのに課税せられ、或は所有者でありながら課税を免れるという不公平は避け難いところであるが、さればとて、所有者の変動に伴い、月割を以て納税義務者を定めることは、徴税技術上煩瑣かつ不便であり、自然徴税費用の増大も必至であるから、むしろ、或る程度公平を犠牲にしても、徴税の簡便を計り、税収入の確保と徴税費用の節減を期することが、多衆を対象とする課税制度としては、結局公共の福祉に適合する所以であり、憲法上の基本的人権、財産権不可侵の原則もまた、公共の福祉のために、ある程度制約は免れないところであるし、又固定資産の所有者は、その所有権の譲渡にあたつて、右を見越し、その対価を定める等適当な処置をとり得るのであるから、右規定のあることを以て、地方税法が憲法に違背し無効であると言い得ないのは勿論であり、控訴人引用の各規定を以てしても、右解釈を動かすに足りない。

ところで、控訴人が、昭和二十六年一月一日当時本件土地の所有者であつたこと前記認定のとおりであり、又土地台帳にその旨登載せられていたことは、成立に争のない乙第二号証によつて明白である以上、その後右土地の所有権を失つたからといつて、同年度固定資産税の納付義務を免れることができないのは当然であつて、被控訴人の控訴人に対する本件固定資産税の賦課処分には、これを無効とすべき違法は勿論、これを取り消すべき違法も亦存しないものと言はなければならない。

更に、控訴人は、同年度第二、三期分の固定資産の賦課が違法であるとして、被控訴人に対し、その納付済の金員の返還を求めているが、固定資産税は市税であり、その納付金は大阪市に帰属し、被控訴人は、単にその賦課徴収の事務を掌つているに過ぎないから、同人に対し、右納付金の返還を求めるのは失当であるばかりでなく、前記説示のように、控訴人に対する右固定資産税の賦課には、何等違法はないから、控訴人の右請求は、この点から見ても亦失当であると言わなければならない。

以上のように控訴人の本訴請求は、すべて失当であるから、これを棄却すべく、右と同趣旨に出でた原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉村正道 大田外一 金田字佐夫)

(別紙省略)

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